ウミホタルについて
ウミホタルの分類
「ウミホタル」はとある生物を示す名称です。海産の甲殻類でサイズは3mmほど。夜行性で砂地の海底に生息しています。基本的に人目に触れない生物ですが、鮮やかな青色の発光信号を使う事からその存在が知られています。Horne (2005)に基づく分類では節足動物門phylum Arthropoda大顎亜門subphylum Mandibulata甲殻上綱superclass Crustacea介形虫綱class Ostracodaミオドコーパ亜綱subclass Myodocopaミオドコーパ目order Myodocopidaミオドコーパ亜目suborder Myodocopinaウミホタル上科suprefamily Cypridinoideaウミホタル科family Cypridinidaeに属する生物で、属名のVargulaと種小名のhilgendorfiiから学名としてVargula hilgendorfii、標準和名としてウミホタルと名付けられています。
Gustav Wilhelm Müllerによる原記載(Müller, 1890)ではCypridina hilgendorfiiとしてCypridina属に含められていましたが、Skogsberg (1920)においてVargula属が新設された事に伴いVargula hilgendorfiiと変更されました。「hilgendorfii」という名前は明治時代に来日して科学を教えていた外国人教師Franz Martin Hilgendorfに献名されたもので、記載に使われた標本をHilgendorfが三浦半島で採集した事から名付けられています。右の写真は現在もドイツで保管されているウミホタルの標本です。Müllerが記載したのは成体のみで、幼体の記載は90年も後になってHiruta (1980)によってなされました。
現在、Vargula hilgendorfiiはVargula属に含められていますが、この属のtype speciesであるVargula norvegicaや近縁な非発光種との間に明確な形態的差異が存在する事が認識されています。Vargula hilgendorfiiはむしろCypridina属に含められる発光種に近い形質を持っていますので、近い将来には再度分類が変更される事でしょう。
他の「ウミホタル」
「ウミホタル」という名称を種名として考えるとVargula hilgendorfiiという事になりますが、少し意味を広げると他の発光能力を持つミオドコーパ類も含まれてきます。トガリウミホタルCypridina noctilca(右写真)がその代表です。Vargula hilgendorfiiと同様の発光能力を持つミオドコーパ類はVargula, Cypridina, Kornickeriaの3属に渡って存在し、カリブ海などでは多くの発光種の存在が知られています。これら3属は全て同じウミホタル科(Cypridinidae)に属しています。日本国内に生息する種ではウミホタル、トガリウミホタルの他に3種ほどの未記載種が発光能力を持っています。
References
Hiruta, S. (1980) Morphology of the larval stages of Vargula hilgendorfii (G. W. Müller) and Euphilomedes nipponica Hiruta from Japan (Ostracoda: Myodocopinan). J. Hokkaido Univ. Edu. IIB. 30: 145-167.
Horne, D. J. (2005) Homology and homoeomorphy in ostracod limbs. Hydrobiologia 538: 55-80.
Müller, G. W. (1890) Neue Cypridiniden. Zoologische Jahrbuecher 5:211-252.
Skogsberg, T. (1920) Studies on marine ostracodes, 1"Cypridinids, halocyprids, and polycopids". Zoologiska Bidrag Uppsala (Supplement) 1:1-784.